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働き始めるときの赤信号

労働契約と期間との関係

私は、パートで働いて2年になります。再就職も難しい時期ですので、このまま働き続けたいのですが、いつクビと言われるか不安です。このまま働き続けることはできるのでしょうか。

まず知っておきましょう。
①パート労働者であっても使用者との間で結ばれた労働契約に基づいて働いています。
②労使ともにその内容を守らなければなりません。
③したがって原則は、労働契約
(説1)の内容で決まります。
ですから、この労働契約に期間の「定めがある」のか「定めがない」のかで働く期間が違います。



■定めがある=定められた期間働く(期間工、有期契約社員など)。
■定めがない=定年まで働く(本工、正社員など)。

(説1)労働契約とは
労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると、労働契約が成立します。具体的には、使用者に雇われて働こうとする人は、就職するときに、働く期間(契約期間)や賃金、労働時間などの労働条件について使用者との間で契約(約束)を結びます。これが「労働契約」です。
労働契約は、労働者が使用者に対して労務を提供することを、使用者がそれに対して対価(質金)を支払うことを約束することによって効力が生じ、双方が合意すれば、口頭だけでも有効に成立します。
正社員、パート、アルバイト、派遣などどのような働き方であっても、労働契約が結ばれ働いています。
この労働契約の基本的なルールが労働契約法で決められています。 
労働契約法では、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。(労働契約法第6条)

●労働契約のルール
労働契約を結ぶ時、重要な労働条件について書面が交付されなければならない

労働基準法第15条(労働基準法は労働条件の最低基準を定めている)では、使用者は、労働者を雇い入れる時に次のような労働条件を明示しなければならない、明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができるとしている。

労働基準法施行規則第5条第1項(明示すべき労働条件)
ア)労働契約の期間に関すること。
イ)仕事をする場所と仕事の内容に関すること。
ウ)仕事の始めと終りの時刻、残業(時間外労働)の有無、休憩時間、休日、休暇等に関すること。
エ)賃金の決定、計算と支払の方法、賃金の締切りと支払の時期、昇給に関すること。
オ)退職に関すること(解雇の事由を含む)。

カ)退職金の定めが適用される労働者の範囲、退職金の決定、計算と支払の方法、退職金の支払の時期に関すること。
キ)臨時に支払われる賃金(退職金を除く)、賞与と最低賃金額に関すること。
ク)労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関すること。
ケ)安全と衛生に関すること。
コ)職業訓練に関すること。
サ)災害補償と仕事外でのケガや病気に対する扶助に関すること。
シ)表彰と制裁に関すること。
ス)休職に関すること。
これらのうち、ア)からオ)まで〔ただし、エ)の昇給を除く〕は、特に重要な労働条件であることから、使用者は、これらについて労働者に書面を交付しなければなりません。
  
また、パートタイム労働者(説2)に対しては、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の3つの事項についても書面を交付することなどにより明示することが義務づけられています(パートタイム労働法第6条)。
労働条件を明らかにする(明示)だけでなく、労働契約の内容(労働条件)を労使双方が労働契約書等の書面で確認・保存することが大切です。
なお、労働契約の内容が、労働基準法等の強行法規に定める内容を下回るものについては、その部分は無効です。

(説2)パートタイム労働法は、パートタイム労働者を「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義しています。例えば、『パートタイマー』『アルバイト』『嘱託』『契約社員』など、呼び方は様々であっても、この条件に該当すれば、パートタイム労働法の対象となります。所定労働時間が通常の労働者と同じフルタイムで働く方については、「パート」などこれに類する名称で呼ばれていてもパートタイム労働法の対象とはなりませんが、事業主はこれらの方についてもパートタイム労働法の趣旨が考慮されるべきであることに留意する必要があります。
派遣労働者の場合、所定労働時間を比べる対象者は、派遣元に雇用されている通常の労働者です。

さてここから本題になります。今まで説明してきた労働契約に契約期間の取り決めがあるか、無いかで異なります
■労働契約の期間に定めがある場合(有期契約)
「労働契約の期間に定めがある場合」とは、労働契約の期間を「いつからいつまで」と決めている場合です(派遣社員は、有期契約が圧倒的に多い)。
この場合、あらかじめ契約期間の終わりの時期が決められているので、その時期がくれば自動的に労働契約は終了します。原則として、契約期間の終わりの時期が来るまではお互いに労働契約を解除できないと言う事になります。ただし結ばれた労働契約が事実と相違する場合、直ちに解除できます。(労働基準法第15条第2項)

又、やむを得ない事由
① 契約期間の途中で事業を継続することができなくなった(使用者側)
② 重大な傷病で労務不能な状態になった(労働者側)
などがあれば、期間途中であっても一方的に労働契約を解除することはできます。特に、使用者については、労働契約法第17条第1項で「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定められています。やむを得ない事由に基づき、使用者が一方的に労働契約を解除(解雇)する際には、解雇予告(手当て)などの労働基準法に定められた手続きが必要です。
やむを得ない事由によって期間の途中で一方的に契約を解除したとしても、その事由が一方的に契約を解除した当事者の過失によって生じた場合は、そのことで相手方が被る損害について賠償する責任が生じます(民法第628条)。

● 有期契約の期間の限度
労働基準法では、労働契約の期間を定める場合、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの(有期の建設工事等)の他は、原則として3年以内となっています【労働基準法第14条】。ただし、契約期間が1年を超える有期契約を締結した労働者は、契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、「やむを得ない事由」の有無にかかわらず、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます(労働基準法第137条)。

また、特例として下記の厚生労働大臣が定める基準による「高度の専門的知識等を有する者」との有期契約締結の場合は、契約期間を5年以内とすることができます。また、満60歳以上の者との間に締結される労働契約についても同じく5年以内とすることができます。

〔厚生労働大臣が定める基準による「高度の専門的知識等を有する者」〕
ア)博士の学位を持っている人。
イ)公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、不動産鑑定士、社会保険労務士、弁理士又は技術士、のいずれかの資格を持っている人。システムアナリスト試験、アクチュアリー資格試験合格者。
ウ)特許法に規定する特許発明の発明者、意匠法に規定する登録意匠を創作した人又は種苗法に規定する登録品種を育成した人。
エ)大学卒で実務経験5年以上、短大・高専卒で実務経験6年以上又は高卒で実務経験7年以上の農林水産業の技術者、鉱工業の技術者、機械・電気技術者、システムエンジニア又はデザイナーで、年収が1,075万円以上の人。
オ)システムエンジニアとして実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1,075万円以上の人。
カ)国等によりその有する知識等が優れたものであると認定され、上記ア)~オ)までに掲げる人に準じるものとして厚生労働省労働基準局長が認める人。

この措置は、政府が労働基準法の改正施行(平成16年1月)から3年を経過した後に、その状況を勘案しつつ検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講じるまでの間の暫定措置として、契約の期間が1年から3年に延長された場合でも、労働者側の1年を超えた場合における退職の自由が保障されたものです。ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約と「高度の専門的知識等を有する者」との有期労働契約、満60歳以上の者との間に締結される有期労働契約については、適用が除外されています。

● 有期契約の更新について
有期契約を結ぶ時、使用者は、労働者に対し、契約更新の有無を明示するとともに、契約を更新する場合があると明示したときは、更新する場合またはしない場合の判断基準を明示しなければなりません。なお、契約の更新にあたっては、その対象から男女のいずれかを排除することや優先することなどは禁止されています(男女雇用機会均等法第6条第4号)。

● 有期労働契約の反復更新と雇止めについて
形式的には雇用期間を定めた契約の反復更新であっても、実質的に期間の定めのない労働契約と認められる場合は、解雇に関する法理が類推適用されます。労働契約に3か月や6か月といった期間の定めがあっても、それが反復更新して長期間に及んでいる場合は、有期契約は実質的に期間の定めのない契約と変わらない,あるいは,労働者が雇用の継続を期待することに合理性があるとされます。
形式的には雇用期間を定めた契約の反復更新であっても、実質的に期間の定めのない労働契約と認められる場合は、労働基準法第20条の解雇予告を必要とし、「合理性を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効とされる(労働契約法第16条)」という解雇に関する法理を類推適用すべきであるとするのが一般的な考え方です。
労働契約や採用の際の説明内容等にもよりますが、繰り返し反復継続されていれば、契約更新が拒否された場合は、解雇に関する法理が適用され、合理的な理由を必要とするとされる可能性があります。

■ 労働契約の期間に定めがない場合
「労働契約の期間に定めがない場合」は、基本的に、労働者と使用者の双方が労働契約の終了に合意する『合意解約』、労働者から一方的に労働契約を終了させる『辞職』、使用者から一方的に労働契約を終了させる『解雇』、あるいは、就業規則等の定めに基づく『定年制』のいずれかの形態により労働契約が終了します。

 

■ 労働契約終了パターン 労働契約の期間に定めがない場合

労働契約終了パターン
呼称
関係法規定・法理等
労働者から一方的に辞める。 辞職 民法第627 条
労働基準法第15条2項
労働者から「辞めさせてください」と願い出て使用者が承諾する。 合意解約 法律は関係なし
(自由にできる)
使用者から「辞めてくれ」と申し込み(退職勧奨)労働者が承諾する。
使用者から一方的に辞めさせる。 解雇 労働契約法第16条
労働基準法第19条~21条
就業規則等に基づく定年年齢の到来 定年制
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律



■ 労働契約終了パターン 労働契約の期間に定めがある場合

労働契約終了パターン
呼称
関係法規定・法理等

あらかじめ決まっていた契約の期間が終了する。
期間満了 法律は関係なし
契約期間の途中で労働者から一方的に辞める。
※ 契約期間が1 年を超え3 年以内の場合で、1 年を経過した後は、労働者は、いつでも辞めることができる。ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約と「高度の専門的知識等を有する者」との有期労働契約、満60歳以上の者との間に締結される有期労働契約については、適用が除外されている。
途中解除
(辞職)
民法第626、628、629条
労働基準法第15条第2項
※ 労働基準法第137条
労働者から「辞めさせてください」と願い出て使用者が承諾する。 合意解約 法律は関係なし
(自由にできる)
使用者から「辞めてくれ」と申し込み(退職勧奨)労働者が承諾する。
契約期間の途中で使用者から一方的に辞めさせる。 途中解除
(解雇)
民法第628 条
労働契約法第16条、第17条第1項
労働基準法第19条~21条
あらかじめ期間が決まっていた労働契約が繰り返し更新された後、期間満了として労働契約が更新されない。 雇止め (実態で)解雇権濫用法理の類推適用
(1) 労働契約の中に期間の定めがあるかを確認する。

(2)期間の定め「あり」の場合で、反復更新をしていれば雇い止めの可能性あり。

(3)期間の定め「なし」の場合は、自分から辞職しなければ定年まで勤務。

労働契約が不明、あるいは、よく分らないなどの場合、まず水面下で静かに情収集集につとめ専門家に相談して対処してください。

■ 労働相談は一般的な内容のものです。具体的な内容については、当ユニオンへ電話、来所してご相談ください。
 

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