お問い合わせ 地図&アクセス 働く女性 ホットラインセンター 労働相談 Q&A 携帯サイト
働き始めるときの赤信号

懲戒処分とは

ささいなことで、「懲戒処分で解雇」と言われました(脅されました)。こんなこと出来るのでしょうか。

まず知っておきましょう。
労働者が、企業秩序を維持するために設けた服務規律や、使用者の指示・命令に違反した場合などで制裁罰を受ける事を懲戒処分と言います。

労働基準法 第八十九条九項に
「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」
とあり懲戒処分を定める場合、就業規則にその種類や程度に関する事項を記載しなけれ
ばなりません。
この規定が、使用者が行う懲戒処分の法的根拠(就業規則は、労使間の約束事なので法的な根拠)になります。ただし就業規則に記載すればいかなる懲戒処分も使用者が自由に出来るものではなく、「一定の合理性」を必要とします。
この「一定の合理性」は、以前は法による規定はなかったのですが、労働契約法が平成20年3月1日から施行され、懲戒について明文化されました。
(1) 労働契約法 第十五条(懲戒)
「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」となっています。
では具体的に、無効・有効の要件は、ということになりますが「相当性の要件」を除いては労働契約法案では触れられていません。
わかりやすく言えば労働契約法は、懲戒に相当すれば、懲戒が出来ると言っているのみでありその他の要件については下記で判断することになります。

懲戒処分の有効要件として,
①罪刑法定主義 (不遡及の原則,一事不再理など)
②平等取扱いの原則
③相当性の原則(労働契約法により明文化) 
④適正手続き等
でその効力の有無が判断されているようです。

上記の要件を見ていただければわかりますが、
労働基準法 第八十九条九項により「懲戒処分を定める場合、就業規則にその種類や程度に関する事項を記載」とありますが、記載がない場合制裁が出来ないと言う事ではありません。この点について注意が必要です。

ここを確認しましょう。
1.懲戒処分の種類について
懲戒処分の種類は、「誼責」「戒告」「昇給・昇進の停止」「減給」「降職・降格」「出勤停止」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などの類型に分かれる。大きく分類すると4系統に分かれる。

A: 詰責・戒告:一般的に、口頭または文書により将来を戒めるもの。

B: 減給:使用者が労働者に支払うべき賃金から制裁として一定額を一方的に差し引く。
但し、差し引くことができる額は、「1回の額が平均賃金の1日分の半額まで」
「総額が一賃金支払い期間における賃金総額の1割まで」
労働基準法第91条による制限で、これを超えての減給は法に違反する。
この減給は、働いたにもかかわらず賃金を減らすパターン。後記(C)と異なる。

C: 出勤停止:労働契約を継続しながら一定期間労働者の就労を禁止する。その間は、就労していないので、賃金は支給しない。賃金を制裁として支払わないのではないので、制裁としての減給には該当しないと考えられる(制裁としての減給は、就労をしたが賃金を減らすあるいは支払わないことが該当する。) 但し、長期間の出勤停止は公序良俗に反するとして無効となる場合が考えられる。期間については、一般的に1週間までとされている。生活が困難になるような長期間の出勤停止は、出来ないと考えてよい。出勤停止の処分を行い、処分が完了した後に解雇は出来ません。(一事不再理、同一行為に対して複数回処分)

D: 解雇:懲戒処分のうち最も重い処分である。懲戒処分による名目上の自主退職も懲戒処分の一つである。懲戒解雇は、所轄の労働基準監督署長の認定を受ければ、、解雇予告も解雇予告手当もなしに解雇を行うことができる。この認定は、法20条の規制「解雇予告・解雇予告手当」の規制を受けなくなるのみであって、「労働基準監督署長の認定」をのゆえをもって解雇が正当とされるわけではない。 解雇にあたって解雇予告や解雇予告手当の保護が当該労働者にいらない程度の相当性があると認定しているのみである。これは、解雇予告や解雇予告手当の手続きがいらないとしているのみであり、解雇の有効性とは無関係である。

2.懲戒処分の有効要件について
①罪刑法定主義 (不遡及の原則,一事不再理など)
②平等取扱いの原則
③相当性の原則(労働契約法により明文化) 
④適正手続き等
で判断してください。

過去のささいな事をもって懲戒処分は、
① 「調査検討に必要な合理的期間の経過後、長期間が経過してなされた懲戒処分又は解雇は、これを正当化する特段の事情がない限り、信義則違反又は権利濫用で無効」とされている判例があり、リストラなどの為の懲戒処分は、無効と考えられる。

② 業務上のリスクとして対応しなければならないものを、当該労働者の責としたものは、無効と考えられる。 たとえばレストランの食器の破損などは、大抵の場合不可抗力であり個人の懲戒理由にはならないと考えてよい。

質問のささいなことで、「懲戒処分で解雇」ですが
一度の遅刻や簡易な事務的なミスという程度では、とても懲戒解雇などの事由には
あたりませんので、懲戒処分の意味をよく理解して対処してください。

対応例
(1) 懲戒処分について,「法的根拠のもと」により懲戒処分を行っているか。
就業規則、労働協約などに懲戒処分の対象事由とこれに対する懲戒の種類・程度が規定されていること。

(2) 懲戒処分について、就業規則などで周知されているか
就業規則が,拘束力を生ずるためには,その内容を労働者に周知されている。

(3) 懲戒については,懲戒することができる場合においては,
社会通念上相当であると認めらるか。
内容としては,①悪意・故意または過失か否か
②過失の場合は重大性
③結果の程度(企業の社会的信用失墜または損害発生の重大性
④過去の同種行為に対する処分
⑤労働者の情状等
⑥同程度の職務違反行為に対する懲戒処分は同一種類,同一程度であること
などで総合的な判断になります。

■ 労働相談は一般的な内容のものです。具体的な内容については、当ユニオンへ電話、来所してご相談ください。
 
赤信号 ホームページ働く者のQ&A

提供 連帯ユニオン